Star Trek 009     #3 My hearts'n the homeland



    第三話 我が心、故郷にあり   part4

「リンク少尉、大丈夫ですか?」
ヘニヨンが、艦長席の下から簡易医療キットを見つけ出し、ジェットの足を診ていた。
医療キットといっても、入っていたのは医療用トリコーダーと、 痛み止めの入ったハイポスプレー、後はせいぜい包帯くらいだったが。
「平気だって。
 それよりさ、ジェットって呼んでくれよ。
 リンクって名字、俺あんまり好きじゃないんだ」
ジェットが、にっと笑いながら言うのに、ヘニヨンもつられたように軽く笑う。
「では、私もバラード、と」
彼女の名前は、異星人的な響きをもって、『バァ・ラァー・ダゥ』と聞こえた。
「そういえば、何処まで飛ばされたんだろうな?」
ジェットが、ふと気付いたように言う。
あの時、とてつもない光が走って、宇宙に出来た穴のようなものがみえて… 衝撃波に翻弄されて…穴に吸い込まれてしまったにしろ、 衝撃波に飛ばされたにしろ、もといたコースから外れたことだけは、間違いない。
「調べてみます」
ヘニヨンが、立ってオペレーターコンソールに移動する。
ジェットも、自分のパイロットシートについたセンサーで周囲を探る。
「ん…?」
おかしい。
この星の並びは、何だ?
「嘘…」
ヘニヨンが、呆然としたように声を漏らす。
「バラード?」
ジェットが、振り返る。ヘニヨンは、首を振っていた。
「嘘よ、ありえないわ。
 こんな…センサーがおかしいんだわ」
ブツブツと呟きながら、ヘニヨンが剥がれ落ちた天井の所為で、 半分使えなくなってしまっている壁面のセンサーパネルを使うのをあきらめ、 何とかまだ無事だったサブコンソールに移動しようとした。
そのとき。
ひびの入った壁面のパネルの奥の回路から、スパークが走った。
「バラード!あぶねえ!」
ジェットが立ち上がりかけ…足に激痛が走る。
「っう!」
思わず床にくずおれそうになりながらも、 必死に立ち上がろうとするが…間に合わなかった。
壁面コンソールが、爆発した。
「きゃあっ!」
吹き飛ばされるヘニヨン。そのまま床に叩きつけられる。
「バラード!」
ジェットは、立ち上がることをあきらめ、ヘニヨンの側まで這って移動する。
「バラード!
 クソっ…」
自分の足に怪我がなければ、助けられたのに。
コンソールまで、ほんの数歩なのだから。
「畜生…バラード!
 しっかりしろ!」
「ジェット…
 艦長に、報告…」
「いい、喋るな!」
ヘニヨンの胸に、大きな穴が開いている。
あふれる血。
ジェットは、ヘニヨンの手をしっかりと握る。
彼女を何処にも行かせないかのように。
「畜生、医療班はまだか?!」
「リンク少尉!」
丁度、ハインリヒが医療キットを抱えて戻ってきた。 ハインリヒは手早く診察し、ハイポスプレーを手にとった。
だが、ジェットの抱えるヘニヨンの体から、ゆっくりと力が抜ける。
「バラード!」
ジェットが絶叫し、ハインリヒの手からハイポスプレーがこぼれ落ち、 わずかな音を立てて床に到着する。
「クソっ…クソっ…!」
唇を噛むジェット。
腕に抱えるヘニヨンの体が、冷たくなっていく。
ジェットは、知っている。
人の死とは…こういうものだということを。
奥歯を噛締め、ヘニヨンの手を放す。ことり、とハイポスプレーと同じ音を立てて、 彼女の腕は床に転がった。
ジェットは、上着を脱ぎ、彼女の遺体にかけてやった。
「副長…ヘニヨン士官を…
 副長?」
ハインリヒの顔が、真っ青だった。
脂汗が額を流れ、顎を伝って床に濃い染みを作る。
ぎゅっと、何かを耐えるように目を瞑るハインリヒ。
「ハインリヒ副長!」
ジェットは、ハインリヒの肩を乱暴に揺さぶった。 「…ぁ」
ハインリヒは、僅かに何かをうめいただけで、ほとんど反応がない。
ジェットは、唇を噛締めた。


ハインリヒの脳裏に、フラッシュのように映像が走る。
いつかも、こんなことがあった。
爆発するコンソール。
床に散る、血痕。
人体のこげるにおいが充満する。
自分の目の前で、為す術もなく誰かの『命』が消えていく。
そう、あれは。

近づいてくる、律動的な足音。
誰かの叫び声。 フェイザー銃の発射音。
『ハインリヒ少尉!後ろだ!』
誰かの声に振り向くと…
目の前に、生白い肌と、
グロテスクな機械が妙に鮮烈なコントラストを持った人物が目に飛び込む。

ボーグ!

ボーグが口を開く。
大勢が一斉に言っているような、抑揚のない音声が響く。
我々は、ボーグだ。
 お前たちを、同化する。
 抵抗は、無意味だ


ボーグに同化される、ということは、『ヒト』としての命が終わるということだ。
同化されたヒトは、『ボーグ』という大きな集合意識の小さな歯車の一つになってしまう。
そこに、感情はない。
人としての喜びも、悲しみも、怒りも、何もかも。
ボーグが、手を上げる―いや、それは手ではない。
手のように見せかけた、何かの機械が無気味に光る。
この部屋にいるボーグはいまやもう一体だけではない。 最初に入り込んだボーグが、部屋の中にいた人々をどんどん同化しているのだ。
同じような、無表情をしたボーグ達が増えていく。
『アルベルト!』
ヒルダ!
自分を呼ぶ声に振り返ったそこには、自分の仕事仲間でもあり、 そして将来を誓い合った仲でもある、大切な女性… ヒルダが、ボーグに今まさに掴まろうとしているところだった。
ヒルダが、ハインリヒに向かって手を伸ばす。
ハインリヒも、必死に手を伸ばしたが、自分もまたボーグに掴まる。
ずぶり、と彼女の首にボーグの同化チューブが差し込まれた。 このチューブを差し込まれると、そこからボーグのナノマシーンが送り込まれて、 あっという間にボーグになってしまうのだ。
『アルベルト…』
ヒルダ!
二人の指が、一瞬絡み合って…ハインリヒの首元に同化チューブが差し込まれた… お互いの手の甲に、体内で増殖した機械が皮膚を突き破って露出する。
指が、離れた。
ボーグの、感情も抑揚も欠落した、機械的な、 そのくせ妙にざわざわとした声が頭の中に響いた。
    ”我々は、ボーグだ”
ハインリヒの、暗くなる視界にボーグの機械に全身を覆われた、彼女が映る。
ヒルダだったモノが、口を開く。
抵抗は、無意味だ…


「副長!」
ジェットの呼びかけに、全く反応しない。
「ハインリヒ副長!」
肩を揺さぶる。
「…クソっ…
 副長、すいません!」
唇を噛締め、ジェットは一言断ると、ハインリヒの頬を思いっきりひっぱたいた。
高い音が、ブリッジに響く。
夢から覚めたように、ハインリヒは、ジェットに張られた頬を押さえることなく ただ呆然とジェットを見る。
「…リンク、少尉?」
「呆けてんなよ!
 何思い出したかは知らねーけど、あんたは副長だろう!」
ジェットが敬語抜き、スラング交じりでハインリヒに向かって叫ぶ。
「あんたがしっかりしてなきゃ、オレ達はどうすりゃいいんだよ!
 しゃきっとしろよ、おっさん!」
一息で言ってしまってから、ジェットはハインリヒが俯いているのに気付いた。
「…おい…?」
ハインリヒは顔を上げ…いつもの皮肉気な笑みを見せた。
「『おっさん』ではなく、『副長』と呼べ。
 …それと、目上には敬語を使え。
 ついでに、スラングを使うのは止めろ。
 艦隊士官として、みっともない」
「…それでこそ、いつもの副長ですよ。
 早いとこ、ちゃっちゃとオレの足を直してくれませんか?」
いつも通りの小言がすらすらとハインリヒの口から出てくるのに、ジェットはにやりと笑う。
ハインリヒが、頷いてジェットの足に治療用の器具を走らせた。
「…悪かったな。みっともないところを見せた」
治療しながら、ぽつりとハインリヒが言う。
「どうしても、その、一寸…な。
 こういう状況は、苦手、なんだ」
ちらり、とハインリヒは自分のガンメタルな右手―ボーグにされた名残―を見る。
ジェットは、軽く笑った。
今までずっと、ハインリヒは何にも揺るがない、厳めしい、機械のような、完璧な人物だと思っていた。 だが、完璧な人間なんているわけがない。
副長も、普通の、ただの人だったんだな。…当たり前か。
「オレだって、副長の頬を思いっきりひっぱたいちまいましたし。
 …お互い、不可抗力ってことで」
足の傷は、だいぶよくなっている。ジェットは、大事なことを伝えようと、 一つ息を吸って、気持ちを落ち着けた。
「先ほど、ヘニヨン士官とここの位置を調べました」
ハインリヒは、ハイポスプレーを手にとり、ジェットの足に痛み止めを打つ。
「きちんと確認したわけじゃないですが」
ジェットは、さっき自分が張ったハインリヒの頬を見る。
思いっきり張ったせいで、色白の頬が、赤くなっていた。
「センサーの表示が正しければ」
治療の終わったハインリヒが、ジェットを見る。
「オレ達は、最初にいたところから五万光年のところに居ます」
ジェットの報告に、ハインリヒの目が丸くなった。
…なんだって?


そのときのハインリヒの表情を、ジェットはおそらく一生忘れることは出来ないだろう。
目をまん丸に開き、驚愕したように口を一寸あける。
頬が僅かに震え、喉仏が上下に動く。
それも一瞬のことで、ハインリヒはすぐさま自制心を取り戻し、右手で口元を覆った。
「いや…待て。
 五『万』光年?
 そんな…まさか。
 今、センサーを、チェックする…」
ブツブツと呟きながら、ハインリヒは注意深く、 いまだ爆発の影響で煙がくすぶっているセンサーコンソールに近づく。
ハインリヒの手がコンソールのパネルを滑らかに動く。
「オレのセンサーによれば、ここは連邦宇宙域から約五万光年。
 ガンマ宇宙域です」
ジェットも、自分のシートのセンサーをもう一度チェックし、報告した。
「…どうやら、そのようだな」
ハインリヒも、頷く。
銀河系の直径は、およそ十万光年。連邦では、銀河系を、大きく四つの宙域に分けている。 地球と銀河系の中心を通ってY軸を引き、さらに銀河系の中心を通るX軸を引く。
向かって、地球の右側が、アルファ宇宙域、左側がベータ宇宙域。
さらに、ベータ宇宙域の上をガンマ、その隣をデルタ、と時計回りに名づけている。
連邦の宇宙域と呼ばれるのは、地球のある太陽系、 及び周囲の星域を中心にしたアルファからベータにかけてのせいぜい四、 五『千』光年分に過ぎない(さらに実際に連邦が中心となって主に活動している範囲は その十分の一程度である) 人類にとって、宇宙はまだまだ未知の世界なのだ。
「…銀河系を、半分以上飛ばされたわけか…」
言って、ハインリヒは通信徽章(コミュニケーター)を叩く。
艦隊士官が必ず胸につけている艦隊のマークを象った徽章(バッヂ)は、 ただの徽章ではない。 通信、及び翻訳機能があり、惑星表面から起動上の宇宙船との交信も可能。 さらに、それぞれ固有の周波数を発信しており、 各個人の位置確認(タグ)にも使われている優れものだ。 使うときは、中央のデルタマークを軽く叩くことで作動する。
「ハインリヒより、艦長。
 至急、ブリッジに来てください」
『了解、副長』
ハインリヒは、艦長が来る前に、自分の気持ちを落ち着けるため、大きく息を吐いた。
ブリッジに充満していた血臭は、環境制御装置が何とか生きていたのか、もうしない。
だが、『死の匂い』は、いまだそこにある。
纏わりつくようなその臭いを、気持ちだけでも払おうと、ハインリヒは軽く頭を振った。

「何事かね、副長?」
ブリテンがブリッジに到着するまでに、ハインリヒとジェットは、 利かないセンサーを出来うる限り酷使して、情報を集めた。
ブリテンがリフトから降りながら尋ねるのに、ハインリヒが報告する。
「まずはセンサーを見てください、艦長。
 これが、我々の今居る周辺の宇宙域の走査記録。
 そして、それを連邦の宇宙図を重ねあわせ、現在位置を特定したものです」
センサーパネルに、銀河系全図が映しだされ… その上のドルフィン号の現在位置を示すマーカーは、広大な銀河系の中で、 とても頼りなく、非情に脆弱に見えた。
ブリテンも、パネルを覗き込んだままむっつりと黙り込む。
「聞くが…センサーに、間違いはないのかね?」
「ありません」
唸るように聞くブリテンに、間髪入れず答えるハインリヒ。
惑星連邦は、実はガンマ宇宙域と、連邦宙域内のベータ宇宙域、 ベイジョーと呼ばれる惑星の近くにあるワームホールを通る権利を所持している。
ちなみにそのベイジョーの近くに浮かんでいる宇宙基地が、DS9である。
ワームホールとは、『虫食い穴』ということばどおり、宇宙に空いた四次元的な穴のことで、 空間、あるいは時間を一足飛びに移動できる、 いまだ詳しく解明はされていない現象である。
自然現象としてのワームホールは殆ど安定しておらず、 何時何処に出入口が出来、どれくらいの空間を飛ばされるのか、 時間枠は安定しているのか、どれくらいの時間そこにワームホールが維持されているのか、 ということは一切不明。
ところが、ベイジョー・ワームホールは、今現在発見されている、唯一の安定した、 人工的ワームホールであり、入口はDS9基地のすぐ近く、 出口はガンマ宇宙域のある地点に固定されている。
ワームホールの通行に関しては、筆舌につくしがたいほどの複雑な経緯があったのだが、 ともかく今状況は落ち着いており、 ガンマ宇宙域側のワームホールの出入口を管理するドミニオンと呼ばれる種族と 和平協定も結ばれていた。
「…ベイジョー・ワームホールの、ガンマ側の出入口はどの辺だ?」
それに近ければ、それを通ってもとの場所に戻れる… ずいぶん大回りだが、まあ、到着先は同じDS9基地だ。
ブリテンは、一縷の望みをかけて聞いたが、しかしそれにジェットは、 暗い瞳をして黙ってセンサーのポイントをさした。

ワームホールの出入口ですら、ここから三万光年も先だった。


ジョーは、ブリッジを見回した。
事故から、すでに半日がたっており、ジョーの気分はまだ多少ささくれ立っていたが、 何とか平静を保っている。 とはいえ、だいぶ青い顔をしていたのだろう、先ほどジェロニモに気遣われた。
大丈夫、と答えはしたものの、 ジョーは自分でも自分が本当に大丈夫かはよくわかっていなかった。
現在危機は脱したが、いまだに各デッキには、 事故の爪痕が色濃く残っており、このブリッジもまた、例外では無い。 ジョーの使うオペレーターコンソールにも、半分のパネルの上にシートがかぶせられており、 床には完全には拭き取れなかった濃い染み。
ジョーは、その染みからそっと目をそらし、グレイのアンダーシャツ姿のブリテンを見た。
事故の時に脱いでいた彼の上着は、どうやら処分してしまったらしい。
「落ち着いたら上着を調達せねばな。  替えの分が無くなってしまった」
アンダーシャツの胸の上の艦隊の通信徽章を軽く撫でながらブリテンが言った。
「紳士たるもの、常に身なりには気を使わねばいかん。
 …艦隊士官としての心得その1を知っているかね?」
パイロットシートの背もたれに軽く手を掛け、 ブリテンは同じくアンダーシャツ一枚のジェットに聞いた。
「規約の遵守?」
ジェットが首をかしげながら言う。
「いやいや、
 『シャツはズボンの中に』だよ。
 きちんと入れたまえ、リンク少尉」
ジェットは照れくさ気に苦笑しながらごそごそとはみ出ていたシャツを入れた。

「さて、諸君」
ブリテンが軽く咳払いをし、改めてブリッジを見回す。
艦内通信で、ブリテンのこの演説はすべてのデッキに放送されている。
「我々は、この未知の世界へと否応なしに連れてこられた。
 広い宇宙の中で、我々は孤独となってしまった」

そう、ここは連邦宇宙域から遥か彼方だ。
ピュンマは、機関室で通信を聞きながら、そっと目を伏せた。
故郷での自分の仲間たちは、どうしているのだろう?

「宇宙連邦の領域までは、我が艦の最高速度でも、30年以上かかってしまう。
 とはいえ、我輩は、戻るまでに30年もかけるつもりは無い。
 何か必ず、手はあるはずだ」

ジョーは、故郷の神父と、庭のバラを想った。
神父様は、一人で大丈夫だろうか?
まだ、バラは咲いているだろうか?
バラが咲き終わるまでに…帰れるのだろうか?

「そこまで戻るには、困難な道が待ち受けていよう。
 が、悪いことばかりではない。
 なぜなら、ここは未だかつて、我々の誰も足を踏み入れたことが無い新天地だ。
 ここを我々は冒険できるのだ。
 これ以上に素晴らしい事があるだろうか?」

フランソワーズは医療室で未だ治療中の患者を診ながら、故郷の兄を想った。
彼女の兄もまた連邦士官であり、フランソワーズが宇宙艦隊に入ったのも、 兄がよく自分の冒険(にんむ)の話をしてくれていたからだ。
今度の冒険の主人公は、自分。

「我輩は、皆に誓う。
 今我輩の話を聞いている諸君ら、
 そして、残念ながら志半ばで倒れた者達」

ハインリヒは、今回の犠牲者の数を頭の中で思い返した。
最終的に、生き残った人数は87人。40人以上の尊い命が、消えた。
そっと目を閉じ、黙祷をささげる。
これ以上、誰一人として、決してクルーを欠けさせやしない。

「すべてのクルーに対して、我輩は誓う。
 立塞がる謎を解明し、真実を追究し、平和を求め、
 この人類未踏の宇宙を勇敢に航海することを。
 …そして必ず故郷に帰り着くことを」

ジェットは真っ直ぐ前を見た。
今までの自分…誰かの言うことにすぐかっとなってしまう、反抗的で、短気な自分… そのくせ誰かに、誰でもいいから、『自分』を認めて欲しいと、何時も足掻いていた。
この、新しい世界でなら、自分は変わることが出来るかもしれない。

「さあ、出航だ。
 リンク少尉、コースをセットしたまえ」
ブリテンの指示に従い、ジェットの手がコンソールの上を舞う。
「了解…コースセット、完了。
 目的地…」
ジェットは、ちょっと言葉を切って、にやり、と笑った。
「故郷」
ブリテンは、それに大きく頷き、改めてスクリーンに向かい、 方向を指し示すように指を前方に向かって真っ直ぐ突き出し、言った。
「…発進」
ドルフィン号が、すべるように動きだす。
この広い宇宙を航海するにはあまりに弱々しい、傷ついた船体(からだ) …それでも、『彼女』は力強く泳ぎだした。
正面のスクリーンの向こうに、新しい、まだ誰も知らない新世界が広がっている。
『不安』を体現したかのような漆黒の宇宙が広がる中で、 星々が『希望』を表すかのように輝き、行く道を照らす導きとなる。

ジョーは、息を一つ吐き…

改めて始まるこの任務に自分が出来る限り精一杯向かおうと、大きく息を吸った。

Starting the ster trek
長い冒険が、幕を開けた。

FIN. 


   
Cyborg009 futuring STAR TREK
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2003 Hime ©UsanosuK 009Annex "The World Court"